総評

退院の日、ポーカーで負けた借りだといって、男はぼくにゆで卵を届けに来た。ぼくは、あのポーカーはイカサマだったんじゃないかと思っている。あまりにもぼくの手はきれいで、あまりにも男の手は無茶苦茶だった。男がくれたゆで卵には、「なま」と書いてあった。ぼくは男の言霊の話を思い出した。永久機関は遠い話だと思ったが、そのときの卵はこうして大事にとってある。優勝はこの卵に捧げたい。
 

逆瀬川 疑朗)